食を共にした中で得た「成功と出世の糸口」

経営・時事

ある経営者の長男が二十歳の誕生日を迎え、1月には成人式・・・、そんな昨年の秋のこと、父が孫である長男を連れて買い物に行き、オーダーメイドのスーツ、ワイシャツ、ネクタイなど一式を揃えてくれました。

その時、義父が長男に注意したのは、「いいか、おじいちゃんはお前がかわいいから、一番良いスーツを買ってあげたけど、いい気になってこれで就職活動をしたり入社式に行ったりしてはいけないよ。男の嫉妬は、女の嫉妬より怖いんだから」

怪訝そうな顔をした長男に、主人が付け加えます。

「オーダーのワイシャツやスーツは、男同士で見れば分かるもんだ。部下が自分より良いスーツを着てるとなると、やっぱり面白くないと思うのが会社の上司と部下の関係なんだ」

なるほど、そういえば・・・と思い出したのが、ある会社の食事会に招かれた時のこと。

その日の幹事は、入社2年目のMくん。

Mくんは子会社の社長の息子で、私にまでも親会社にコネで就職をしたことを臆面もなく話してくれるような、とても明るい性格の男性。

その彼が、料理研究家を接待するということで張り切って選んでくれたのが、都内のホテルの最上階にあるフレンチレストランでした。

地方出身、真面目一筋50年といった感じの部長が、店内を見回して何となく居心地が悪そうにしているのに比べ、お店の人に、

「M様、いつもありがとうございます」

と挨拶をされているMくん。

末席に座っていながら、堂々たる迫力でワインのテイスティングをしています。

おやおやおや・・・高そうなコース料理が運ばれてきて、隣の部長は、私としゃべるよりもワインの値段の方が気になる様子。

私は、今後のMくんのことがとても心配になりました。

会社の接待交際費は(それぞれ会社ごとの決まりはあるでしょうが)普通は、新入社員が決済できるものではないでしょう。

課の経費、部の経費が決まっている中での接待は、チームワークが勝負。

自分だけが立役者になってはいけないのです。

また、それより何より、自分の上司である人よりも高いスーツ、高級車を持っている、グレードの高いところに行っている、お金を持っている・・・ことを感じさせてはいけないのです。

「自慢しない」などというレベルではありません。

その気配を一切感じさせないことが、肝心なのです。

私は、それは人としてのたしなみだと思います。

若い時には、自分を大きく見せたいものです。

けれど、上司より大きく見せて良いものなど何一つありません。

「慎みを知って慎まざれば禍(わざわい)遠きにあらず」

義父はきっと、孫に教えたかったのでしょう。

「これが成功と出世のコツだ」と。

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