本来の意味と「逆」の意味が一人歩きしているちょっと困った「ことば」と、実際に使われがちなパターンをご紹介します。
これを機に正しい意味を覚えて、雑談などの豆知識としても使ってみてください。
意味が逆転して誤用されていることば、慣用句のトップクラスなのが次の2つではないでしょうか。
「役不足」、本来は役者に対して役が不足であることを指します。
つまり、その人の力量に比べて与えられた役目が軽すぎるという意味です。
例として、「課長、この仕事は私には役不足で無理です」などと言う場合ですが、正しい意味だと「私がするには、仕事が簡単すぎます」と言っていることになり、実際とは逆に近い状態になってしまいます。このセリフを言う時には、「経験不足」「力不足」を使うと良いでしょう。
「確信犯」、本来は思想・宗教・政治分野などの信念に基づき、自分の行為を正しいと信じて行われる行為や犯罪(それを行う人)を指し、もともとは法律分野のことばです。
テロ行為などは「確信犯」を用いても構いませんが、よく使われる誤用での意味は、「悪いこと」「やましいこと」とわかっていて行われる行為や犯罪(それを行う人)です。
「課長に“来月から営業に回れ”と言われたんだけど俺では役不足だよ。課長も確信犯だよな~」どうですか?
ありがちなセリフですよね。
これは間違った使い方の例として書きましたが、気持ちはとてもよくわかります。
それほど誤用の方が一般化しています。
同じ状況を正しい表現にするならば、「課長に“来月から営業に回れ”と言われたんだけど、俺では力不足だよ。課長も故意に言ってるよな~」あたりでしょうか。
ことばをスマートに使うのは素敵な大人の身だしなみにも近いのですが、誤用という場違いなお洒落になってしまうと、かえって恥をかきかねません。
また、「難しいことばを使うと賢そうに思われる」と思いがちですが、「あいつはよく熟語やカタカナ語を使って話すけど、間違ってることも多いよ。
あれはモテたいと思っての確信犯だよな?」・・・本当の意味を知っている相手だと、「君もだよ」と笑われてしまうかもしれませんね。
先の例、話し言葉だと「故意」では通じにくいかもしれません。
「わかって言ってる」「わざと言ってる」と、逆に簡単なことばを使うのもテクニックです。大事なのは話したい内容が相手に通じることです。
ことばは、その場(書く・話す・場所・雰囲気)や相手に合わせることも必要で、敬語や謙譲語もそうですが、やはりTPOに合わせた身だしなみに通じます。
テレビや新聞で意味を知らない語句を見聞きしたら、少し手間でも調べるようにしましょう。冒頭で書いたようにことばをきちんと使えると印象もアップしますが、例のように逆の意味のまま間違って使うと印象も逆になります。
何事もプロほど基本を忘れないと言います。
「応用の前に基本を忠実に」、ことばも同じですね。